当館は、染色家・芹沢銈介の作品と収集品を展示・収蔵する美術館です




　昭和2（1927）年春、静岡の友人・鈴木篤と朝鮮旅行に出た芹沢は、朝鮮に渡る船中、雑誌「大調和」に連載中だった柳の論文「工藝の道」を読み、「長年悩みつつありし工藝に関する疑問氷解し、工藝の本道初めて眼前に拓けし思いあり。生涯にかかる感動的の文章に接せしことなし。」というほどの深い感動を受けます。以後柳を師とあおぎ、民藝協会の主要なメンバーの一人として、活動していくことになります。
　翌昭和3（1928）年、大礼記念国産振興博覧会に柳たちが出品した「民藝館」を訪れた芹沢は、床の間にかけてあった沖縄の紅型の風呂敷に強い感動を受けます。「その模様、その色、その材料、こんな美しい楽しい染物以上の染物があるかと、夢のような思いでした」と、のちにそのときの心境を語っています。
　立て続けに出会った、柳宗悦と紅型。この二つによって、芹沢の生涯は決定づけられ、柳を師と仰ぎ、紅型を理想に据えつつ、染色家として生きていくことになります。柳は芹沢を「立場をくずさない質」であり「考えにぐらつかない」人と評しましたが、その言葉の通り、この両者に対する尊敬の念は、終生揺らぐことがありませんでした。		  

昭和２(1927)年春、朝鮮旅行にて
 　芹沢の染色家としてのデビュー作は、ろうけつ染による「紺地蔬菜文壁掛」（杓子莱文）で、昭和4（1929）の「第4回国画会展」に出品して入選、国画奨学賞を受賞しました。翌昭和5（1930）年以降は型染に専念、同年春の国画会展にも入選し、Ｎ氏賞を受賞し、会友に推されました。
　以後芹沢は、雑誌「工藝」の装幀（昭和6年の12冊分）、「蔬果文壁掛」、「伊曾保物語絵巻」、「静岡四季二曲屏風」などの作品を制作しました。
　　昭和9（1934）年3月、芹沢は水谷良一の厚意によって東京・蒲田に土地と工房を与えられ、一家で上京します。これによって、柳ら一流の文化人たちと親しく接するようになるとともに、染色に専念できる環境になったことで、ようやく本格的な作家活動に踏み出していくことになります。

バナースペース

静岡市立芹沢銈介美術館

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