芹沢は、ヨーロッパの品々にも早くから注目していたと思われますが、現地で収集を行ったのは昭和41（1966）年、初の西アジア、ヨーロッパ旅行の折でした。ヨーロッパ諸都市を巡る48日間の旅行中、朝早くから夜遅くまで、71歳とは思えないほど精力的に歩きまわり、「驚嘆、感動、陶酔」の毎日を送ったといいます。その際、寺院、聖堂、修道院、博物館、古市街等を見学するだけではなく、各都市のバザールや骨董街、古書店にも分け入り、様々な工芸品を入手してています。その後、２度渡仏した際にも、パリの骨董店などをつぶさに見て回りました。ヨーロッパの品々は、こうした旅行の際に入手したものに加え、国内で購入したものもかなり含まれています。

　陶器の分野では約50点の資料がありますが、中でも18世紀から19世紀にかけてイギリスで日用品として用いられていたスリップウェアは15点にのぼります。また、15世紀にスペインで栄え、豪壮な雰囲気を持つラスター彩も芹沢の愛蔵品でした。その他イギリス、スペインを含む、ドイツ、イタリア、オランダなどの陶器があります。

　ヨーロッパの資料では書籍が最も多く、約70点あります。これは、書物の記述内容ではなく、長い伝統のあるヨーロッパの造本や書体、挿絵に強い魅力を感じていたためで、16世紀から19世紀までの様々な書籍を集めまています。特に、芹沢自らがイタリアの古書店で発見した「大型書籍の革表紙」は、表面に獣毛がそのまま残されており、大のお気に入りでした。